相続税の納付方法と「物納制度」

相続税の納付は、原則として現金による一括納付とされています。
しかし、手元資金が不足している場合には、「延納」や「物納」といった制度を利用することができます。
- 延納
相続税を分割して納付する制度 - 物納
現金での納付が困難な場合に、不動産や有価証券などの財産で納付する制度
物納申請件数は減少傾向
相続税の物納制度について、令和6年度中の状況を見ると、
- 申請件数:50件
- 許可件数:31件
- 取下げ:2件
- 却下:3件
となっています。
金額ベースでは、
- 申請額:約89億円
- 許可額:約45億円
となっています。
かつて平成18年頃には1,000件を超えていた申請件数も、近年では2桁台で推移しており、物納利用は大きく減少しています。
高齢化を背景に制度見直しへ
近年、日本人の平均寿命の上昇や高齢者人口の増加により、被相続人・相続人ともに高齢化が進んでいます。
また、相続税を取り巻く社会環境の変化を踏まえ、令和7年度与党税制大綱では、
「納税者の支払能力を的確に勘案した物納制度となるよう見直しを行う」
と示されていました。
これを受けて、令和7年度税制改正では、相続税の物納制度における「延納可能限度額」の見直しが行われています。
令和7年度税制改正の主なポイント
今回の改正では、主に次の3点が見直されました。
1.将来の収入減少を考慮した計算方法の明確化
これまでは、延納可能額の計算について、納期限時点の収入金額を基準としていました。
改正後は、将来的に収入減少が確実と見込まれる場合について、その影響を考慮した計算方法が明確化されています。
2.平均余命を考慮した延納年数へ変更
今回の改正で特に注目されるのが、延納年数の考え方です。
従来は、年間納付資力に一定の「延納可能最長年数」を乗じて計算していました。
しかし改正後は、
- 課税相続財産の種類ごとの延納年数
- 申請者の平均余命年数
を考慮した算式へ変更されています。
つまり、物納許可限度額の計算基礎となる延納年数について、
「制度上の年数」と「申請者の平均余命年数」のいずれか短い方
を上限とする仕組みになりました。
「平均余命」が重要な判断要素に
今回の改正によって、今後は申請者の年齢が物納制度に大きく影響することになります。
申請時点での平均余命が延納年数の上限となるため、高齢の申請者ほど延納可能年数が短くなる可能性があります。
その結果、物納許可限度額にも影響が及ぶことが考えられます。
3.生活費や事業経費も考慮
さらに改正後は、従来の物納許可限度額に加え、
- 延納期間終了後の生活費
- 事業継続に必要な経費
なども加算できる仕組みとなりました。
これにより、納税者の実際の生活状況や事業実態をより反映した制度へ見直されています。
まとめ
令和7年度税制改正では、相続税の物納制度について、納税者の支払能力をより実態に即して判断する方向へ見直しが行われました。
特に、延納年数の算定に「平均余命」が導入された点は大きな変更点です。
今後は、相続税の物納申請を検討する際には、申請者の年齢や将来の収入状況なども含め、早めに検討・準備を進めることが重要になるでしょう。
延納と物納
延納は分割で納める制度で、物納は「延納によっても金銭で納付することを困難とする事由」があって、「その納付を困難とする金額を限度」とする等の要件があります。
また、納付する財産も不動産、上場株式等を最優先として非上場株式や動産などが対象とされます。
相続財産を売却せずに納税できるため、現金支出を抑えられることや物納許可限度額までは譲渡所得税が非課税になることが利点となります。
この記事は2026年5月に書かれたものです。
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