国外財産調書の総額が8兆円を突破

海外投資を行う富裕層への監視が一段と強化

「海外にある資産は把握されないのでは」と考える人もいるかもしれません。しかし、国税当局は金融機関や納税者から提出される各種調書に加え、外国税務当局との情報交換制度を活用し、海外資産の把握を進めています。

国税庁が公表した資料によると、令和6年分の国外財産調書に記載された総財産額は前年より1兆7,048億円増加し、8兆1,945億円(前年比26.3%増)となりました。また、提出件数も1万4,544件(同9.8%増)となり、いずれも制度開始以来で過去最高を更新しています。

有価証券が全体の約7割を占める

国外財産の内訳では、有価証券が5兆4,817億円(前年比34.0%増)と最も多く、全体の66.9%を占めています。

これに続き、預貯金が8,817億円、建物が5,397億円、貸付金が2,618億円、土地が1,686億円となっています。

国税庁では、近年の株価上昇による有価証券の評価額の増加に加え、円安による為替の影響も総財産額が増加した要因とみています。

調書を提出していても申告漏れは調査対象に

国外財産調書を提出していれば、それだけで安心できるわけではありません。

公表された事例では、国外財産調書に海外金融機関の預金口座を記載していたものの、その預金利子などの所得が申告されていなかったケースがありました。税務調査の結果、利子所得に加え、円へ換金した際に生じた為替差益についても申告漏れが判明し、5年分で約1億円の所得漏れが認定され、約2,000万円の追徴課税が行われています。

情報交換制度を活用し海外資産を把握

国税庁は、海外投資や海外資産を保有する個人に対し、国外送金等調書や租税条約に基づく情報交換制度に加え、CRS(共通報告基準)に基づく非居住者金融口座情報なども活用し、海外取引や海外資産から生じる所得の把握に積極的に取り組んでいます。

これらの情報をもとに税務調査を実施し、申告漏れや所得隠しの把握を進めています。

海外投資を行う富裕層への調査は高額追徴が目立つ

特に、海外投資を行う富裕層に対する税務調査は重点的に実施されています。

令和6事務年度の所得税・消費税調査では、海外投資を行う富裕層に対する調査1件当たりの追徴税額は1,595万円となり、所得税の実地調査全体の平均追徴税額299万円と比べて5倍以上の水準となっています。

海外資産は国内から見えにくいというイメージがありますが、国税当局はさまざまな情報収集制度を活用して資産や所得の把握を進めています。国外財産調書の提出はもちろん、海外資産から生じる利子や配当、譲渡益、為替差益などについても適切に申告することが重要です。海外資産や海外取引については、「把握されないだろう」という安易な判断は避け、適正な申告を心掛ける必要があります。